文字やイラストだけが商標ではない

この節でわかること

0)前回のおさらい

1)文字商標

2)図形商標(ロゴマーク)

3)記号からなる商標

4)立体的形状からなる商標(立体商標)

5)色彩からなる商標(色商標)

6)音商標(サウンドロゴ)

7)その他

  • 前回のおさらい

 前回(第1節)でもご紹介させていただいた通り、商標法で「商標」とは『商標法第2条第1項』において次のように規定されています。

 この法律で「商標」とは、人の知覚によって認識することができるもののうち、文字図形記号立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であって、次に掲げるものをいう。

一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの

二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)

 つまり、文字や図形等の標章であって、業として商品を生産等する者がその商品について使用するもの、あるいは、業として役務を提供等する者がその役務について使用するものが「商標」と説明しました。

 そこで、上記に規定されている、文字、図形、記号、立体的形状、色彩、これらの結合、音、その他からなる各商標について、それぞれ事例を交えて説明していきたいと思います。

  • 文字商標

 文字商標は、大きく2つに分けることができます。一つは【標準文字】という文字商標です。この標準文字というのは、特許庁長官が予め指定した文字からなる文字商標のことをいいます。

 参考までに、【標準文字】として指定されている文字が掲載されている別表がございますので、以下にURLのリンクを共有します。

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/trademark/binran/document/index/shiryou_1_1.pdf

 例えば、弊所の屋号「K-FOREST知財事務所Ⓡ」は登録商標でもあるのですが、【標準文字】での登録を受けています。

登録第6193695号

 なお、【標準文字】として認められるためには、横一列で表記される文字列で、文字数は30文字までと定められています。スペースも文字数に含まれますが、スペースはいくつ入れても問題ありません。

 一方で、二段表記されたものや、絵文字が含まれているものや、縦書きのものや、ポイントの異なる文字を含むものや、色付きの文字、特殊な書体で表記されたものは【標準文字】とは認められませんので、ご注意ください。[1]

 もう一つの文字商標として、上記の【標準文字】に該当しない文字商標が考えられます。後に説明予定の「申請書類の書き方」の章で詳しく説明しますが、【標準文字】での登録を受けたい場合には、この『【標準文字】』の表記を申請書類の指定箇所に明記しておく必要があります。

 逆いえば、【標準文字】の指定をしないで申請してしまうと、【標準文字】での登録を受けられないということになります。しかしながら、文字で構成されている以上「文字商標」であることには変わりないため、広い意味で【標準文字】の指定がない文字からなる商標も文字商標であると言えます。

 すなわち、縦書きの文字列であっても、色付きの文字列であっても、それらは「文字商標」ということになると考えられます。

  • 図形商標(ロゴマーク)

 図形商標とは、例えば「クロネコヤマト」の子猫を加えた猫のイラストがあしらわれたロゴマークなどをイメージしていただけるとわかりやすいかと思います。

登録第3085606号

 必ずしもイラストである必要はなく、例えば、赤い四角で囲まれた「ユニクロ」のロゴマークのように、「ユニ」部分と「クロ」部分とが二段で配列されたものも、図形商標と言ってもよいでしょう。

登録第4998657号

  • 記号からなる商標

 「?」や「!」、「~」や「―」、「()」(カッコ)などが記号ですが、実はこれらは上述の【標準文字】として指定されています。理論上、例えば「?!~()」なんていう記号だけからなる商標も成立し得るのかもしれません。

 一方で、後掲するように、記号一つ(例えば「?」のみ)では商標とはなり得たとしても、商標登録が困難な場合が多いことにご注意ください。

  • 立体的形状からなる商標(立体商標)

 立体商標の代表例としては、ケンタッキー・フライド・チキンのカーネルサンダースの立像や、不二家のペコちゃんの立像などが有名です。

登録第4157614号

 また、コカ・コーラの瓶や、ヤクルトの容器なども立体商標として認められています。

 最近では、明治製菓の「きのこの山」が立体商標としての登録を認められました。

  • 色彩からなる商標(色商標)

 「色商標」・・・、その用語だけではイメージしにくいかもしれません。

 例えば、こちらが代表的な色商標ですが、おわかりでしょうか?

登録第5930334号

 多くのみなさんが、この色商標が付された商品をお使いになられたことがあるのではないでしょうか?

 特に、小中高と机に向かって勉強を頑張っていたみなさんは馴染みが深い商品だと思います。

 正解は、トンボの「mono消しゴム」のパッケージにあしらわれた青白黒のストライプカラーからなるもので、これが色商標の代表例となります。

 他に、コンビニエンスストア「ファミリーマート」の緑、白、青のストライプカラーも色商標です。

登録第6085064号

  • これらの結合からなる商標(結合商標)

 例えば、文字と図形とが結合した商標が結合商標となります。後掲しますが、文字だけでは登録を受けられない場合、特徴的な図形を付加した結合商標とすることで商標登録を受けることができる場合があります。

 結合商標の代表例としては、(株)サンリオの登録商標であるハローキティの結合商標があります。キティちゃんのイラストの下に、「HELLO KITTY」と「ハローキティ」の文字とが並列で表記された結合商標です。

登録第3289976号

 なお、上記のように、結合商標とすることで商標登録を受けやすくなる場合があるのですが、結合商標の要素である文字や図形の選定には慎重になる必要があります。詳しくは後の章でご説明します。

  • 音商標(サウンドロゴ)

 「音商標」と聴くと「なんだそれ?」と思われる方もいらっしゃると思いますが、「サウンドロゴ」と聴くとイメージしやすいかもしれません。文字通り、音からなる商標ですが、平成26年の商標法改正により、上述の色商標などと共に導入された商標です。

 音商標の代表例としては、ラッパのマークの正露丸のコマーシャルを見たことがある人は耳馴染みがあるかもしれませんが、『パッパッパッパッ~、パッパッパッパッ~、パ~パッパッパッパッ~』というラッパの音で構成されたサウンドロゴです。

登録第5985746号

 音商標を利用すると、消費者はその企業を音でイメージすることができます。

  • その他の商標

 その他に「ホログラム商標」や、「位置商標」、「動き商標」もあります。

 ホログラム商標は見る角度により表示内容が変わる商標です。ホログラム商標の代表例として、JCBの商品券にあしらわれたホログラムがあります。

登録第5908592号

 「位置商標」もそれだけではイメージしにくいかもしれません。商品パッケージにあしらわれたデザインの位置に特徴があるものが位置商標となり得ます。位置商標の代表例としては、日清食品ホールディングス(株)のカップヌードルの包装容器にあしらわれた破線からなる図形の位置を特定する商標です。

登録第6034112号

 「動き商標」とは、文字通り動く態様の商標です。動き商標の代表例として、(株)ワコールの、花が開くように徐々に展開し、最終的に二本のリボン状の図形からなる「花」又は欧文字の「W」をモチーフとした図形に変化する商標があります。

登録第5804316号


[1] 商標審査基準〔改訂第16版〕第4 第5条 「3.標準文字について」参照

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