初めての広島
初めての広島
1991年、広島大学への入学を機に、私は郷里の岐阜から広島へと移住することになった。
広島に対する知識としては、高校生のときに修学旅行で訪れた「原爆ドーム」や「安芸の宮島」を知っていたことぐらいだ。
その程度の知識しかないのに、広島に移り住むことを決めたのは、根っからの軽さなのか?
そんな自分でも広島に住み始めて驚いたことが3つある。
一つ目は、街と海との距離が近いことだ。
なぜ、そのことに驚いたのかというと、
それまで、海なし県の岐阜で生まれ育った自分にとって、海とは少なくとも2時間以上車で移動しなければ出会うことができない場所(北は福井(日本海)、南は愛知(太平洋))だったからだ。
ところが、広島県はその南側全体が瀬戸内海に面していて、広島駅から市電でわずか30分ほど移動すれば広島港(瀬戸内海)に着いてしまうのだ。
呉市などは、湾岸沿いに県道31号線が走っているため、瀬戸内海の穏やかな風景を眺めながらドライブすることができる。
二つ目は、女子高生も広島弁を喋る(当たり前)ことだ。
正直、これが一番インパクトがあった。
広島駅近くのフタバ書店に入店したときのことだ。
別に盗み聞きをするつもりで聞いていたわけではないが、
自分がメボシの本をパラパラとめくりながら立ち読みをしていると、
近くにいた女子高生2人の会話が耳に入ってきた。
「ワシね~、○○じゃけえね~・・・」
もうビックリである!
女子が「ワシ」?(偏見)
どうなっているの?
そんな偏見も3ヶ月も経てば常識としてとらえることができるようになったのだが・・・
三つ目は、広島では市電が最強であるということだ。
広島市内には「広島電鉄」が運営する市内電車(通称チンチン電車)が走っている。
チンチン電車は、かつて岐阜市内でも走っていたから、それ自体が珍しいのではない。
広島市内ではチンチン電車が最強なのだ。
何が最強かというと、宮島線を除くすべての路線が、当時130円の一律運賃で利用できたということだ。
白島線にいたっては、何と90円だった。
しかも走行している電車の種類が多種多様で、電車マニアの皆さんであれば、一日ウォッチングしても飽きないのではないだろうか。
被ばく電車、ドイツから来た低床車両、1両編成のワンマンカー、レトロ電車、1両まるごとボディに広告が貼られているラッピング電車、他県から譲りうけた電車など、様々な電車が走っている。
さらに、通常、一般車は広島電鉄の軌道内を走行できない(はず)なので、軌道内に停車したものなら、後ろから市電が近づいてきたときに、有無を言わさず、「パアーーーン‼」とケタタマシイ音響の警笛が鳴らされるのだ。
当然、一般車と市電とが接触すれば、一般車は物凄い勢いで弾き飛ばされることは言うまでもない。
その驚きもつかの間で、ある広島名物の食べ物との出会いが、自分の広島好きをさらに加速させていくことになるのだ(続く)。