お好み焼き
お好み焼き‼
岐阜生まれの私にとって、お好み焼きと言えば、いわゆる関西風が常識だった。
関西風は、初めに生地、卵、キャベツ、そして豚肉などの具材をよく混ぜ、その混ぜたものを鉄板の上に載せて丸く整え、両面を焼いていく。
一方の広島風(※1)は、生地、キャベツ、もやし、豚肉、生地、やきそば、卵が、この順(※2)で積層されて、焼かれていく。
これには、驚きよりもむしろ斬新な感覚を覚えた。
初めのうちは、生地と具材とが混ざっていないお好み焼きなんて邪道だ、と思っていた自分がいたかもしれない。
しかし、そんな思いは広島に住み、週に1回多いときで3回お好み焼きを食べるにつれ、無くなっていった。
そして、広島風と言えば、関西風のモダン焼きとは異なり、標準でやきそばが入っていることが特徴である。
さらに、お好み焼きに投入されるキャベツの量が尋常じゃなく大量なのである。関東の人に分かりやすく言えば、投入されるときのキャベツの盛り方が、ラーメン二郎のもやしの盛り方に似ている。
さらに、広島風の定番ソースは、ご存じオタフクソースである。この味との出会いは衝撃的だった。
岐阜で育った私にとってのソースは、ウスターソースとケチャップとを混ぜたソースだった。その味には、少し酸味がある。
一方のオタフクソースは、ドロッとしていて、味は甘いのである。
私は、そんな広島風が大好物になってしまった。
大学時代、よく通った店は、東雲本町にある「三八」である。
当時、シングルで600円、ダブルで800円だった。
シングルとはそば玉1つ、ダブルとはそば玉2つのことだ。
学生だったから、ダブルでも全部食べ切ることができたが、ここのダブルは通常のお店のダブルとは明らかに異なる。今だと食べ切れないかもしれない。
そば玉で言えば3玉くらい入っていそうな量なのである。
その「三八」は、オタフクソースを使っていなかった。
使っていたのはヒガシマルの「ミツワソース」であった。
そのミツワソースにとりこになった。オタフクソースにはないシャープさがミツワソースにはあるのだ。
そして、三八のお好み焼きのやきそばには予め下味(ソース)がつけられるのだ。
この三八のお好み焼きが、私が作るお好み焼きの原点になっている。
とくに三八の大将から手ほどきを受けたわけではなく、大学時代に三八に通い、鉄板の席に座って大将のワザを盗み(?)、それを家で見よう見まねで作ってきた。
あれから25年はたっただろうか・・・
今や、生粋の広島県民(?)も、その味を認めてくれるお好み焼きを作ることができるようになっているのかもしれない。
※1:「広島風」と記載しているのは、「関西風」との違いを明確にするために使用しているにすぎません。「関西風」も同様です。
※2:具材の積層順は、お店によっては異なる場合があります。