商標ドラマ「事件はある日突然に」

事件は、ある日突然に・・・!?

 

 

≪登場人物≫

 柏木 一郎…50歳。スーパーマーケット「ABCマート」を経営。

 柏木 花子…45歳。一郎の妻。ABCマートの経理と店のレジを担当している。

 

 柏森 権造…60歳。移動販売を主とする弁当屋「柏ベントー」を経営。

 

 柏田 幸子…45歳。花子の友人の専業主婦。花子からは「幸っちゃん」と呼ばれている。

 柏山 哲男…50歳。一郎の経営者仲間。建設会社を経営。町のご意見番で、

      町の情報で知らないことはないというくらいの情報通。

 

 柏木一郎は、スーパーマーケット「ABCマート」の経営者(代表取締役)である。

 30代のときに脱サラして「ABCマート」を出店し、

 地域の住民に親しまれるスーパーマーケットを目指すべく、

 妻の花子とともに「ABCマート」を切り盛りしてきた。

 

 20年間、「ABCマート」を経営してきた一郎だったが、努力の甲斐あって、

 最近では、地域の住民で「ABCマート」を知らない人はいないくらいの地域一番の

 人気店になっていた。

 

 特に、「ABCマート」店内で毎日揚げている「ABCコロッケ」は、

 11時からの販売開始から1時間もたたないうちに、

 500個が瞬く間に売り切れてしまうほどの人気商品であった。

 

 連日「ABCコロッケ」を買い求めるお客さんの長蛇の列ができ、にぎわっていた。

 

 ある日、花子が慌てて、「ABCコロッケ」を揚げている一郎のもとへ駆け寄ってきた。

 

 花子『あなた、大変、友達の幸っちゃんが、こんなこと言ってたんだけど・・・』

 

≪花子と幸子の会話≫

 花子の携帯電話が鳴る。トルルルルー。

 

 花子『もしもし、あー、幸っちゃん。どうしたの?』

 

 幸子『あー、花ちゃんとこの「ABCコロッケ」、今度は移動販売も始めたの?

 すごいわね~、業務拡大?これで「ABCコロッケ」もますます売れて、商売繁盛ね。

 私も、移動販売してくれるなら、忙しいときにお店に来なくてもいいから、助かるわ~。』

 

 花子『えっ、ちょっと待って…、うちの店、移動販売なんて始めてないけど。』

 

 幸子『またまた~、そんなこと言って、隠すことないじゃない。

 私と花ちゃんとの間に隠しごとはなしよ。とにかく私もご近所に宣伝しとくわ。じゃあね~。』

 そう言って、幸子は電話を切ってしまった。

 

≪一郎と花子の会話≫

 一郎『何だそりゃあ?それ確かなのか?うちのコロッケは、揚げたてのアツアツを

    お客さんに提供するのが売りなんだ!移動販売なんて、手間もかかるし、

    第一、せっかくのアツアツ(のコロッケ)が冷めちまうじゃないか‼』

 

 一郎は、仲間内では“瞬間湯沸かし器”と言われている。

 気に入らないことがあると、すぐに怒るのだ。

 

 花子『ちょっと~、あたしに怒鳴らないでよ。

    でも、あなた、移動販売なんて本当にやってないわよね?』

 

 一郎『やってるわけないじゃないか!いつも俺が考えたことはお前に相談して、

    やるかどうか決めてきたんだ!俺を疑ってるのか?』

 

 花子『わかったから、大声で叫ばないでよ。疑ってるわけじゃないわよ。確認しただけよ。

    でも、どうするの?このまま放っておいていいの?』

 

 一郎『いいわけないだろ!とにかく、そのうちのコロッケを移動販売している野郎のとこに行って、

    文句言ってきてやる!』

 といって、一郎は店を飛び出していった。

 

 一郎は事前に、物知りの哲男に、本当に「ABCコロッケ」が移動販売されているのか、

 確認してみた。

 

 哲男『あー、そうそう。お前んとこのだろ?聞いたよ。いつも町の中央公園あたりに

    軽四輪で来ては、販売してるんだってな。拡声器で、“おいしい、おいしい、

    ABCコロッケ”って町内を回ってるよな。お前んとこも、ついに移動販売始めたんだな~、

    やるな~って思ってたんだよ。』

 

 一郎『違うんだよ。俺、移動販売なんてやってないんだよ。一体誰なんだよ、そいつは。』

 

 哲男『えっ、そうなのか?俺はまたてっきり、一郎が回っているもんだと思ってたんだが…』

 

 一郎『そんなわけないだろ。それで、その軽四は何時頃に中央公園に来るんだ?』

 

 哲男『そうだな~、確かお昼の12時くらいじゃなかったかな~。』

 

 一郎『じゃあ、今11時50分だから、今から行ったらまだ間に合うな。』

 

 そう言うと、一郎は一目散に中央公園に向かった。

 

≪中央公園にて≫

 一郎が中央公園にやってくると、どこからともなく“おいしい、おいしい、ABCコロッケ~”

 というスピーカー音とともに、軽四輪が近づいてきた。

 

 それを聞いたのか、近所の主婦たちが大勢、中央公園に集まってきた。

 

 軽四輪のボディには『柏ベントー』と表示されてあった。

 

 軽四輪が中央公園脇の駐車場に停車すると、車から60代の男性(柏森権造)が降りてきて、

 軽四輪のリアハッチを開けると、「ABCコロッケ」と書かれた幟をかかげ、

 集まってきた主婦らに、コロッケを販売し始めた。

 

 しかも、権造は、一郎が販売する「ABCコロッケ」の100円の半額の50円で販売していた。

 

 一郎は、真相を確かめるべく、自分も客になりすまして、その“ABCコロッケ”を権造から購入し、

 その場で食べてみた。

 

 確かに美味しいが明らかに冷めている…。しかも、よくよく味わってみると、モサモサしていて、

 自分が揚げている「ABCコロッケ」のジューシーな味わいは微塵もない。

 

 じわじわと腹が立ってきた一郎は、主婦たちがはけるのを待ってから、権蔵に問いただした。

 

 一郎『おい、あんた、一体どういうつもりだ!』

 

 権造『おたく、どなた?いきなり何なんですか?』

 

 一郎『俺は、「ABCマート」で「ABCコロッケ」を販売している柏木一郎というものだ。

 困るんだよ、勝手に同じ名前のコロッケを売られちゃあ。』

 

 権造『ABCマート?知らないな~。でも勝手にって、なんでおたくの許可が必要なの?

 そもそも、「ABCコロッケ」は商標登録されてないでしょ。』

 

 一郎『商標登録?何わけのわからないこと言ってんだよ。ともかく、うちのまがい物を、

 しかも、うちの販売価格より安く売られちゃあ、迷惑なんだよ。』

 

 権造『まがい物って、随分失礼な物言いじゃないですか。ちゃんと私が手作りした自慢の

    コロッケなんですよ。あなたも経営者なんでしょ?商標登録を知らないなんて、

    勉強不足だな~。ともかく、商標登録されてないんだから、しかもおたく商標権者でも

    ないんでしょ?だったら文句言われる筋合いはないよ。ほらほら、商売の邪魔だから、

    お引き取り願えますか?』

 

 一郎は初めて聞く“商標登録”という言葉と、権造の落ち着き払った態度に、

 このままでは押し問答になると思い、一旦その場を引き上げ、哲男のところへ再び戻った。

 

 哲男『そりゃあ、一郎、お前、分が悪いよ。「ABCコロッケ」の商標登録もってないんだろ?

    それじゃあ、お前に、その権造さんの商売にとやかくいう権利はないよ。

    参ったな~、俺は、一郎なら商標権について勉強してると思ってたんだがな~。』

 

 一郎『商標登録?商標権?一体何なんだよ、哲男、お前まで訳の分からない言葉で

    俺を惑わせるのか?』

 

 哲男『あのな~、一郎。よく聞けよ。商標権っていうのは、国から与えられる独占排他権なんだよ。

    つまり、ある商品名やサービス名、例えばお前の「ABCコロッケ」という商品名も

    商標だよな。その商標を、特定の商品やサービスに独占的に使用できたり、

    他人による無断使用を排除できたりする権利が商標権なんだよ。』

 

 一郎『そ、そうなのか?』

 

 哲男『そうだよ。経営者たるもの、商標権くらい知っておかないとな。

    でも、このままじゃあ、お前も面白くないだろ。俺、知り合いの弁理士を知ってるから、

    相談してみたらどうだ?』

 

 一郎『弁理士?何だそれは?』

 

 哲男『弁理士も知らないのか?しょうがねえな~、まったく。お前、地元の商工会議所の創業塾を

    受けたんだろ?知的財産権について教えてもらっただろ?

    弁理士は知的財産権を扱うプロなんだよ。』

 

 一郎『創業塾に通ったのは覚えてるけど…、知的財産権って特許だけじゃないのか?』

 

 哲男『何言ってんだよ、商標権も知財財産権だよ。説明あったはずだぜ。

    まあ、それはともかく、急いだほうがいい、弁理士の柏原太郎先生に伝えとくから、

    早く相談してきな。』

 

 一郎『わかった、その弁理士の柏原先生に相談してみるよ。』

 

 この物語はフィクションです。登場人物や登場施設はすべて架空のものです。
 

特許権や商標権など知的財産権のとり方を
わかりやすくアドバイスいたします。

商標申請や特許申請が初めての方も、お気軽にご相談ください。
取得方法から活用のしかたまで、わかりすくアドバイスいたします。

特許権や商標権など知的財産権のとり方をわかりやすくアドバイスいたします。

商標申請や特許申請が初めての方も、お気軽にご相談ください。
取得方法から活用のしかたまで、わかりすくアドバイスいたします。


お問い合わせ

電話

アクセス